特別寄稿 医学部 丸山先生 ~バスケットボールコーチング依存症患者より~
- 牟田 晃洋
- 2019年2月15日
- 読了時間: 9分
更新日:2019年7月27日
医学部バスケ部OB 丸山先生
あれから20周年
歯学部の現役、OBの皆さん。創部20周年おめでとうございます。
「歯学部の嘉手納です。よろしくお願いします。」
医学部のOB会でいつも平身低頭、手をさすりながら満面の笑みで挨拶をしていた嘉手納を思い出します。
あれから20年以上経つんですね。早いものです。
記念誌に何を寄稿しようか悩みました。
能書きたれるのは100年早い。
涙あふれるような思い出話は他のOBの先生方が書いてくれることでしょう。
そこで
私は私らしく、バスケットボールの戦術「ゾーンオフェンス」を簡単にまとめてみることにしました。
某邦画の名セリフ(もう死語らしいですが…)
「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」
同様
体育館で上手くなろうと、日々努力されている現役選手の皆さんが、
その中でも特に「大学から初めてバスケットボールをやってみよう」と新しく入部された選手の方々が生き生き楽しく練習されることが、今後の貴部30,50、100周年につながるものと考えています。
楽しい練習の第1段階は、「ACQUIRE THE KNOWLEDGE」
知識を得て、練習の意味を正しく理解することです。(闇雲な体力&根性練習はナンセンスです)
その一助になればと思います。
バスケットボールは技術習得に非常に長い時間を要するスポーツです。
バスケット部を辞めたくなったとき、体育館に足が向かなくなったときこそ、実は実力が最も伸び始めている時期でもあります。
方針の違い、人間関係、色々あると思いますが、それも「バスケットボールが好き」な思いあればこその悩みでしょう。
どうぞ、自分の本心を誤魔化さず、正直に、6年間続けてみてください。
「バスケットボールは本当に面白いスポーツですよ。」
次回30周年は「プレスオフェンス」を予定しています。(笑)
追伸:
コーチはプレイヤーを指導することで成長させてもらえる存在です。
私も歯学部のOB、現役の皆さんとの関わりの中でどれだけ経験を積ませて、成長させていただけたか計り知れません。
誌面をお借りして感謝申し上げます。
「ZONE OFFENSE」
●「ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスの攻撃法は同じだよ。あまり意識せず攻撃すれば良いよ」とよく言われるけど本当?
純粋なマンツーマン、俗に言うベタマン(オフェンスにベタベタ張り付くだけのマンツーマン)や、制限区域からほとんど出ない純粋なゾーンはディフェンスが発達した現代ではほとんど見かけない。
マンツーマンでもヘルプサイドは制限区域の中にポジショニング(サッグ&フロート)する場合が多い(マンツーマンのゾーン化)
ゾーンでも1人ボールマンを激しくプレスし、残り4人はゾーン、ボールマンと両脇のオフェンスをパスディナイする3人マンツー、2人ゾーンなどマッチアップゾーンも増えてきている(ゾーンのマンツーマン化)
「ボールを激しくプレスするマッチアップゾーン」と「スクリーンに対しオールスイッチで対応するプレッシャーマンツーマン」はほとんど見分けがつかない
若干の調整は必要だが、マンツーマンの攻撃法はゾーンにもそのまま通用することが多い
●ファーストブレイクを狙え
ゾーンはセットされなければディフェンスとして機能しない、
ビッグマンが戻る前に攻撃せよ
●オフェンスリバウンドに飛び込め
マンツーマン程、1人1人をボックスアウトできないから
●ディフェンスを動かし続けよ (< 忍耐力)
最初に仕掛けたサイドからアウトサイドショットを打つ、インサイドにボールを入れようとするチームはゴール近辺を固めるゾーンディフェンスチームを喜ばせるだけ。
わずか2~3秒の間にディフェンスにミスを起こさせることはできない。
忍耐強くボールのサイドチェンジ(LEFT SIDE ⇔ RIGHT SIDE, OUTSIDE ⇔ INSIDE)を繰り返し、ディフェンスを動かし続けポジショニングミス、ローテーションミス、コミュニケーションミスを誘発させよ。
動いているディフェンスはディフェンスリバウンドに入りづらくなる。
●パスフェイクを多用せよ
ゾーンディフェンスはボールの動きに併せて5人がシフトする。
激しくアグレッシブに動くゾーンには特に有効。
ボールを失うことなく(高い安全性)、ディフェンスを大きく動かせる可能性がある
相手の体力を消耗させ、より空いた味方のプレイヤーを生み出せる
●アラインメント(配置)=ギャップアタック
ディフェンスとディフェンスの間に位置し続ける事でパスが回り、ディフェンスがボールをマークしようと頑張る程、2人を引きつける事ができ、ゾーンの体型が崩れやすくなる

●空いている人の見つけ方
マンツーマンディフェンスでは、激しくVカットをしたオフェンスプレイヤーがオープンになることが多く、それはボール保持者にとって視覚への強い刺激となり見つけやすい。しかし、ゾーンでは激しく動いた先にディフェンスがいた場合必ずしもオープンにはならない。
激しく動いたオフェンスやディフェンスが元いたエリアへカットするオフェンスプレイヤーがオープンになることが多い。
ゾーンディフェンダーが守るべきエリアから「出ていくプレイヤー」と「入ってくるプレイヤー」がいた場合、瞬間的に2対1ができ、どちらかがオープンになるはず。
特に「入ってくるプレイヤー」がディフェンダーの視野の外から入ってくる場合オープンになりやすくなる。
「動いたプレイヤーの後ろへ後ろへと動く」事はゾーンオフェンスのカッティングにおいて効果的な動きとなる

例1:vs 3-2 ZONE ショートコーナーにいる④or⑤がハイポストにフ ラッシュした後、⑤が再度ショートコーナーへ移動。⑤の後へ④、④の後へ②が動くと効果的

例2:vs 1-3-1 ZONE
②がウイングから(①から見て)右のハイポストエルボーへ、④が②の通り過ぎた左のハイポストエルボーへ(②の後への動きとみなせる)。①はどちらかへパス。④の後へ⑤が、⑤の後へ③が動くと効果的

●ドリブルパンチング
2人のディフェンダーの間を1~2つドリブルインする。誰も反応しなければそのままゴールへドリブルすればよい。反応してくれば激しく動いたディフェンダーの近くにいる味方にパスすれば良い

●ショートコーナーを有効活用する
ディフェンスの背後(視野の外)からボールに向かってフラッシュできる
ショートコーナーにパスが入ればローハイ、フラッシュしてハイポストにパスが入ればハイロープレイが狙える
ディフェンスがショートコーナーにいるオフェンスをケアして下がる場合、
アウトサイドのウイングやコーナーのディフェンスが手薄になる。
ディフェンス同士の距離がコート上縦方向(サイドラインに平行な方向)に広がり、ギャップアタックし易くなる
ゴール側からシールすればオフェンスリバウンドが確実に取れる
(普通、ディフェンスがボックスアウトをゴール側からするのですが、これはオフェンスがディフェンスをボックスアウトする好例です)
●スクリーン
ベースライン沿いのディフェンダーに対するスクリーン
パスが渡れば即確率の高い得点につながるので、マンツーマンでつかざるを得ない

ハイポストからトップにかけて位置するディフェンダーに対するスクリーン
ハイポストはワンパスで360度どのエリアにもパスが出せる場所。
最もプレイさせたくない場所だからマンツーマンで激しくつかざるを得ない
マンツーマンでつかざるを得ないところにはスクリーンが有効
センターに対するスクリーンも有効
制限区域ど真ん中のプレイヤーに対してはもちろんマンツーマンで阻止して来るであろうから。

●パス&ラン
外にプレッシャーをかけるべく広がったディフェンスに対してはパス後にボールサイドカットをすることでリターンパスをもらうことができれば、シュートチャンスが生まれます。アウトサイドはもちろん、ポストマンのパスランも有効なインサイドプレイです。

●インサイドゲームを行なう
「インサイドで点を取る」事はゾーンオフェンスにおいて絶対不可欠
ローポストへのパスは常に狙う。入れば高確率のシュート。要(かなめ)となる相手長身ディフェンダーをファウルトラブルに追い込める。
ハイポストは360度どの方向にもワンパスでゾーンを大きく崩せるパスが出せる重要な中継点。
ジャンプシュートやワンドリブルでゴールにアタックできる場所でもあり、ハイポストへのパス回数がゾーンオフェンスを決めるとも言える
2人のインサイドプレイヤーの動き(ゾーンを3メンアウトサイド-2メンインサイドで攻めるとき)…3回のパス毎にパラレル、クロス、サークルしてポジションを変えるべき
●アウトサイドへのプレッシャーの有無で攻撃法を分ける
(マンツーマンディフェンスと同じ考え方)
プレッシャー有り…インサイドにスペースがあるはずだから、そこをパスラン、ドライブ、ポストアップで攻める
プレッシャー無く下がっている場合…スクリーンをかけアウトサイドでの高確率中距離ジャンプシュートを狙う。
●ハイポストへのパスに対してディナイをしないゾーンには
ハイポストへのパスを積極的に狙いハイローモーションを行なう
●コーナーへは、どのディフェンダーがマークするのか?
ベースラインのディフェンスがコーナーへ出る場合…ローポストへのパスを狙う
ウイングのディフェンスがコーナーへ出る場合…マークするまでに時間がかかりコーナーでのシュートが狙える。ハイポストへパスし易いのでハイロープレイが狙える

●相手チームのオフェンス能力の高いプレイヤーの占めているエリアへ多く攻撃し、疲れさせ、ファウルアウトを試みよ
●ディフェンスの弱いサイドが明確ならばそのサイドから攻撃せよ
●強いリバウンダーのいるサイドからシュートせよ
ミスショットは反対サイドへリバウンドする傾向にあるから
●ある程度得点をリードしたら、ボールコントロールせよ。そうすれば、外へプレッシャーをかけるか、マンツーマンディフェンスへ変更するだろう。より攻めやすくなる。
<おわりに>
実は、詳しく述べようとすればあと10倍位の誌面が必要です。
しかし、敢えて簡単にまとめることで分からない行間を、新たな発見を、部員、OB、OG同士でバスケットボールを議論し合うきっかけ作りになっていただければ良いと考えています。
現役世代はチェンジングディフェンス流行りで、突如のゾーンディフェンスにとまどう場面が多いのではないでしょうか?
OB、OGの先生方も社会人、OB大会など競技を続けている方が多いと伺っています。
練習不足から外角シュート率は下がる、ディフェンスする側も体力がない(本来ゾーンディフェンスはマンツーマン以上に体力を消耗する激しいディフェンスですからこの考えは誤りですが…)等の理由からゾーンディフェンスを組まれる場面が多くなるのではないでしょうか?
バスケットボール依存症患者のさらなる増加を心から願っています。
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